事業について
私たちのめざす将来像
洋上風力分野において、大学と産業界の間で、人材育成や人材供給のエコシステムが形成され、 高度人材が継続的に供給されることにより、事業開発の拡大はもとより、新たなコンセプトや新技術の導入が促進され、競争力のある洋上風力産業が創出されるとともに地方創生型の海洋開発が実現している。もって、洋上風力分野が学生にとって魅力ある産業となっている。
わたしたちが進める教育の
「しくみとカリキュラム」づくり
英国IDCOREなど見られるような産業界と大学が一体となった高度人材の育成・供給の「しくみとカリキュラム」(日本型IDCORE)の構築を進めます。
わたしたちは、洋上風力の先進地・英国で展開する大学院教育プログラムIDCOREをモデルに、日本型のIDCOREの構築を目指しています。
英国IDCOREは、エジンバラ大学が代表団体を務め、複数の大学等と複数の企業が参画する4年間の大学院教育プログラムです。1年間の座学教育の後、企業の実践的課題をテーマに、3年間の長期有償インターンシップを経て、博士号を取得し、高度人材として産業界に送り出されます。学生は、3年間のインターンシップの間、主にスポンサー企業の現場で実際の業務に携わりながら博士レベルの高度な技術課題に取り組みます。その間、十分な報酬を得ながら、実践力のある高度人材として経験を積んでいきます。この取り組みは、政府が2/3,産業界が1/3の資金負担を行い2011年から実施されています。
IACOW洋上風力連携講座 / 単位互換制度

IACOWでは、将来、洋上風力発電事業のプロジェクトの統括的業務を実施できる幅広い知識と高度な専門性を有する人材の育成に取り組んでいます。現在、座学のカリキュラムとして、メンバー大学が連携して、大学院の正規科目として8科目からなる「IACOW洋上風力連携講座」の構築を進めています。既に、4科目については開講し、メンバー大学間では、他大学の開講科目でも自分の大学の履修単位とすることができる単位互換制度も、準備が整った大学から取り入れています。
IACOW洋上風力連携講座科目
| 科目名 | 開講大学 | |
|---|---|---|
| ❶ | 風車工学 | 秋田県立大学 |
| ❷ | 漁業共生・ステークホルダマネジメント | 秋田大学 |
| ❸ | 発電所運用・メンテナンス | 長崎大学 |
| ❹ | ビジネス・イノベーション(「スタートアップ概論A」) (令和8年開設予定) | 千葉大学 |
| ❺ | プロジェクトマネジメント (令和9年開設予定) | 北九州市立大学 |
| ❻ | 金融・保険・法務(「洋上風力発電の金融・保険・法務」) (令和9年開設予定) | 北九州市立大学 |
| ❼ | エネルギ―政策・制度 | 長崎大学 |
| ❽ | 検討_浮体式技術(仮称) (令和8年開設予定) | 長崎大学 |
実体験として、洋上風力を学ぶフィールドワークの提供
洋上を含むプロジェクトの現場での学びは、多くの学生に強いインパクトを与えます。地元に洋上風力のフィールドがある大学と企業が、広域に連携することで、学生たちに現地・現物で学ぶ機会を提供し、学びの動機付けを行います。


実践型インターンシップ(学びのインターンシップ)のしくみづくり

近年、インターンシップが採用面接の一環のような位置づけになりつつある中、本来の「学びのインターンシップ」の機会を開拓していきます。
英国IDCOREで実現しているような長期の有償による実践的なインターンシップの実現を目指しながら、まずは日本の現状に合わせた短期(1週間程度)のインターンシップの事例の拡大や、複数大学と複数企業による合同インターンシップの試行等に取り組んでいます。年度の前半には、業界・企業研究会として、洋上風力関連企業を個別に複数紹介する機会を設け、学生の皆さんに関心を持ってもらうとともに、洋上風力関連企業には、学びのインターンシップの受け入れ機会の拡大を働きかけています。
(※)IDCORE:InDustrial Centre for Doctoral Training for Offshore Renewable Energy
産学連携によるイノベーションの創出と共同研究

大学院教育の効果を高めるためには、担当教員の指導のもとで学生自身が企業の実課題をテーマとした研究や技術開発等に関わることが重要です。このために企業のニーズと大学の研究シーズのマッチングをはかり、共同研究等の事例を重ねていく取り組みを進めています。既に複数の事例が創出されてきています。
コンソーシアムメンバーの大学と企業の間でのニーズとシーズのマッチングのしくみの構築とその効果的運営、具体的研究活動の事例創出の拡大を目指しています。
学生ネットワーク(大学生・高専生)の形成
IACOWでは、メンバー大学に限らず、全国の洋上風力分野に関心のある学生の皆さんに、学びの機会を提供することを目指し、学生ネットワークを運営しています。洋上風力に魅力を感じている全国の大学生や高専生の皆さんのネットワークを作り、洋上風力に関する最新情報やイベント情報の提供、相談の受付などを行っています。

洋上風力の人材育成をテーマとしたイベントへの出展

洋上風力に関して、商業ベースの展示会やイベントが開催されていますが、それらを学生が最新情報を肌で感じることができる機会になるようなしくみづくりに取り組んでいます。商業ベースの空間であっても、学生が効果的に学ぶことができるよう、学生向けの企画として、イベント会場内に展示ブースや案内デスクを設置する、学生向けの講演会を企画するなど行っています。出展企業のなかには将来の洋上風力の担い手との出会う機会として対応してもらうなど、メンバー企業以外でも賛同を得ることも増えています。
社会人向けリカレント教育
急速な拡大が必要とされる洋上風力では、社会人教育も欠かせない課題です。企業や社会人のニーズにマッチした、大学だからこそできる社会人教育のプログラムづくりにも取り組んでいます。洋上風力企業に在職する人材の高度化や洋上風力分野への他業種からの転職など、洋上風力の成長産業化に向けて、人材の面からの貢献を目指します。
講座受講時だけでなく、受講をきっかけとした講師陣と受講企業技術者等の人的ネットワーク構築を通じた技術者コミュニティの形成など、受講者派遣企業と大学が一体となった教育のエコシステムの構築を進めていきます。
コンソーシアムの拡大を目指す
IACOWは、洋上風力に取り組む発電事業者と地元にウインドファームが展開する計画がある大学が集まってコンソーシアムを形成するところから活動を開始し、大学の正規の教育として、「しくみとカリキュラム」の構築を進めてきました。今後、「しくみとカリキュラム」の実施や継続的な改良など、産業界への高度人材の継続的な供給というアウトカムを実現するには、数年間の試行・改良が必要であり、さらに裾野広く洋上風力関連企業の皆さんの参画が必要と考えています。発電事業者の皆様だけでなく、サプライチェーンやバリューチェーンの企業の皆様についても、2026年度から、正規のコンソーシアムメンバーとしての参画をお願いする方針です。洋上風力に関係する幅広い企業の皆様の参画を期待しています。

